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第四回 『腹圧性尿失禁について』
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第三回 『治りにくい・治しにくい排尿の問題』
第三回は、治りにくい・治しにくい排尿の問題についてお話したいと思います。
最初に、排尿症状の中でも「生活の質」を大きく損ねる夜間頻尿についてⅠ,Ⅱ,Ⅲの3回に分けてお話します。夜間頻尿の多くは前立腺肥大症や過活動膀胱の治療薬で軽快します。しかし中には、膀胱の過活動ばかりでなく夜間多尿や睡眠障害など複数の要因が絡み合って生じるため、過活動膀胱治療薬だけで治療してもうまくいかない場合があります。ここで、夜間頻尿を理解するために、多尿と頻尿の違いと、関連性についてお話しする必要があります。
多尿とは一日尿量(正常:500ml~2000ml)が2500ml以上と多量になる状態をいい、糖尿病、尿崩症(抗利尿ホルモンの異常による)、心因性多飲などが原因になります。一方、頻尿とは一日排尿回数が成人で8回、高齢者で10回を超えることをいいます。一日排尿回数(排尿の頻度)は一日尿量と一回排尿量との関係で決まります。一日尿量が多ければ、一回排尿量が正常でも排尿回数が増え頻尿になります。逆に一日尿量が正常でも一回排尿量が減少すれば、排尿回数は増え頻尿となります。一回排尿量の減少は、膀胱や尿道、前立腺の炎症、膀胱結石や異物、膀胱がん、間質性膀胱炎、骨盤内疼痛症候群、過活動膀胱、前立腺肥大症、膀胱頸部硬化症、尿道狭窄、萎縮膀胱など様々な疾患によって生じます。
ここで、過活動膀胱の女性や前立腺肥大症の男性について考えてみましょう。多くの方は60歳から65歳を超えた高齢者ですので、一日尿量の平均値は700ml~1200mlとなります。一回排尿量の平均値は100ml~150mlに減少しています。これで一日排尿回数は5回(700ml/150ml)~12(1200ml/100ml)回となります。排尿回数が12回の場合、夜間就寝後8時間に2回排尿し、昼間16時間に10回排尿(1.6時間ごと)で合計12回です。この排尿回数はつらいと感じるほど多いでしょうか?日常生活で慣れてしまえばこの程度は問題ないと感じる方が多いと思います。しかし、これが限界とも考えられます。夜間3回以上排尿に起きないといけなくなると、睡眠が障害されるでしょうし、昼間も旅行や、観劇などのイベント時に2時間持たないのではつらくなります。昼間の頻尿は過活動膀胱治療薬で尿意切迫感を抑えればコントロール可能ですが、夜間頻尿は加齢や生活習慣病によって生じる膀胱の変化に加え、循環動態の変化、睡眠障害が絡んでくるため、病態をとらえるだけでも一筋縄ではいきません。
次回は夜間頻尿の本題に入り解説したいと思います。
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第二回 『前立腺肥大症と過活動膀胱について』
第2回は、前立腺肥大症と過活動膀胱について説明いたします。
前立腺肥大症の症状には、尿が出にくい排尿症状と尿がためられない蓄尿症状があります。前立腺が肥大すると膀胱の出口を圧迫刺激するため、膀胱はたまった尿を無意識のうちに排出しようとします。この変化は排尿を維持しようとする、ヒトの持った自然の働きによります。前立腺による膀胱出口の閉塞によって膀胱が過活動状態なり、症状が出現するのです。これは、前立腺肥大症の初期から生じるため、頻尿(尿が近い)・尿意切迫感(尿が我慢できない)として早期から発症し、つらい症状です。これらの症状は、「国際前立腺症状スコア(IPSS)」という問診票で評価します。前立腺による膀胱出口の尿道の圧迫を解除すると膀胱が尿を出そうとする負荷(労力)が少なくなるので、膀胱の過活動状態は多くの場合改善します。圧迫を解除し、尿道を緩める薬は多数使用可能です。改善の程度は、症状の改善度と尿流測定装置による尿流の改善によって判定できます。
それでは次に、これらの薬だけでは症状が改善しない二つの場合について説明いたします。一つは、前立腺の大きさが30g以上になっている場合です。前立腺の大きさは、エコー検査で前立腺の縦横高さの3方向の長さを測定することによって計測できます。大きさが30g以上の場合は、前立腺を肥大させる男性ホルモンの働きを前立腺の中だけでブロックする薬で縮小を目指します。この薬そのものはホルモン剤ではなく、全身の男性ホルモンの状況に影響しません。この薬によって前立腺を少しでも縮小できれば、将来尿が出なくなり手術が必要になる事態を避けられることが、米国の大規模試験で示されています。
もう一つは、膀胱出口の閉塞を解除しても蓄尿症状が改善しない場合です。こうした事例では、閉塞だけでなく加齢による膀胱独自の変化によって過活動膀胱が生じています。この場合には過活動膀胱の治療薬を追加する必要があります。膀胱を弛緩させる作用を持つ薬は、抗アレルギー薬、向精神薬、胃腸薬、呼吸器治療薬、市販のかぜぐすりなど数多くの薬があります。ここで、注意しなければならないことは、過活動膀胱の治療薬は膀胱を弛緩させて治療効果を発揮させるため、排尿の力が減弱することです。効きすぎると残尿が増え、最終的には尿が全くでなくなる尿閉という大変な状態になります。
なかなか改善しない尿の症状の治療は的確な診断のもとに、薬の使用法をきめ細やかに決めていく必要がありますので、専門医にご相談ください。
次回は、排尿障害治療薬の使い方についてお話いたします。
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第一回 『過活動膀胱の概要について』
3月8日水曜日、戸田・蕨医師会のお招きで講演をしました。演題名は「頻尿・尿失禁について」です。内容は、1.過活動膀胱の概要、2.前立腺肥大症と過活動膀胱、3.治りにくい・治しにくい排尿の問題、4.腹圧性尿失禁、についてでした。
これから、4回に分けて、講演内容を皆様方にわかりやすく説明しようと思います。
初回は、過活動膀胱について説明いたします。
過活動膀胱(OAB:overactive bladder)は女性に多い病気で、2002年に国際尿禁制学会によって提唱されました。尿意切迫感(トイレが近い、トイレまでがまんするのが大変という症状)に、通常は頻尿および夜間頻尿を伴い、時には切迫性尿失禁(突然がまんできないような尿意を感じ、トイレに間に合わずもらしてしまうという症状。これを、UUI:urge urinary incontinenceといいます)も伴います。全国調査によると810万人が過活動膀胱を有すると推計されています。過活動膀胱と類似の症状を示す病気に、膀胱がんや結石、様々なタイプの炎症があります。過活動膀胱と診断するためには、これらの病気を下記の検査や診断で、除外する必要があります。
膀胱がんや結石、炎症などを除外するために、最初に膀胱エコー検査と尿検査を行います。尿潜血がある場合は膀胱がんを疑って尿細胞診検査を追加します。膿尿(尿中に白血球が多い場合)、細菌尿では、尿培養検査を行います。腎エコー検査で、膀胱より上流の尿路の拡張が無いことを確認することも重要です。尿路の拡張がある場合には、膀胱の収縮力の低下(過活動膀胱とは逆の状態)や尿道の圧迫・狭窄によって残尿が増加していることがあります。治療法が全く異なってくるので注意が必要です。
過活動膀胱は、正しい診断のもとに適切な治療薬を服用すれば、不快な症状がなくなり快適な生活が送れます。しかし、正しい診断を受けずに漫然と薬を内服した場合には、症状が軽快しないばかりか、良くなっても思わぬ病気を見落とすことがあります。
次回は、前立腺肥大症と過活動膀胱についてお話いたします。